【連載記事】虹の向こうに⑧ 〜今回は、釜石から
2月の初め、とあるツアーで、大槌町と釜石市の被災地を巡ってきました。そのうち釜石市では、地元有志が2014年から実施している「新春韋駄天競走」に参戦する機会に恵まれました。有名な兵庫県西宮神社の新春行事「開門神事 福男選び」にヒントを得たイベントで、市街地から高台の日蓮宗千寿院までの286メートル、高低差30メートルを一気に駆け上がり競うのです。
1等の“福”もさることながら、ねらいはとにかく高台を目指して駆け抜けること、それを心身に記憶すること。「楽しみながらも、津波から命を守る高台避難の大切さを伝えたい」というのが、主催者の願いです。
競走は年代や性別ごとに行われ、親子の部では小さな子たちが保護者に手を引かれながらも2分ほどで完走。しかしながら、成人してから100メートルを走ることもない私は、坂道に差し掛かるとすぐにゼイゼイハーハー、女性の部8人中7位というしょっぱい成績に終わりました。
日蓮宗千寿院は、あの3月11日も、多くの人が避難した場所。この坂道をのぼることは、悲しい記憶に触れることでもあるでしょう。出場者には、実際に津波で家を流された人もいたと聞きました。次の世代、次の時代に伝えるために、この坂道を駆けたのでしょう。もうすぐ、6度目の3月11日が巡ってきます。
〜Fuhito(あしなが育英会ファシリテーター)