「アマビエを届ける。」⑬〜野辺地町「自遊木民族珈琲」様
「アマビエを届ける。」の13回目は、野辺地町「自遊木民族珈琲」さんです。
自遊木民族珈琲の板橋諒さんとは、2ヶ月前にイベントでお会いした際に、新型コロナウイルスによる社会の変化についてちょっとお話をしました。あれから2ヶ月が経過し、その続きのお話を伺う為に休業中のお店にお邪魔しました。
自遊木民族珈琲さんでは、長くフリーペーパーを配布してくださりながら、多くの方にtovoの活動を広げてくださっています。またご自身の主催するイベントでも大変お世話になっております。お子さんの生まれたばかりの自遊木民族珈琲にも、しっかり疫病退散のアマビエをお届けしました。
※お世話になっているお店はもっとたくさんあり、スピード感を保ちながら、どんどんお話を伺いたかったのですが、ここにきてちょっとフェーズが変わってきた感じがあるので、13回でこのコーナーは最終回と致します。また少し時間を置いて、なんか変わってきたなと思ったら、第2章を始めるかもしれません。(2020.5.20)
自遊木民族珈琲 板橋諒・Tomi インタビュー
(インタビュー日:2020年5月15日(金)・インタビュア:小山田和正)
今は休業中なんですよね?
諒「そうですね。今、お店は営業してないんですよ。」
Tomi 「4月に入ってからゴールデンウィーク前までお店を開けてました。ゴールデンウィーク入ってから今までずっと休んでいます。好きなことばっかりやってる感じです(笑)
来週、5月22日までは休みで、23日(土)から再開しようかなという感じ。子どものこともあるし、営業日数や時間は今まで以上に短縮しようと思っています。」
諒「冬季も休んでいたから、結局半年くらい休んでいる感じですよね(笑)現金収入はね、オンラインショップだったり、先月のテイクアウトで思っていたよりお客さんが来てくれてちょっとあります。
収入は下がるけど、ポジティブに捉えてて、特に不安はないですね。飲食店の方のお話を聞いたり、記事を読んだりしていますけど、結局、家賃だったりお店を維持していく為のお金がかかるじゃないですか。それがうちにはないので。やらなければやらないで、それなりに暮らしていけるし。」
Tomi 「収入は少ないけど、ガソリン代とか交際費とかを使ってないし、出ていくお金がないんです。なので、収入も支出も少ないっていう(笑)」
諒「逆に時間ができたおかげで、いろいろやれなかった部分ができたりとか。あとはどうやって出ていくお金を抑えようかなっていうのを考えています。
例えばですけど、これディーゼル車なんですけど、天ぷら油で走るように改造しようかなって思っています。廃棄する油をリサイクルして燃料にするって、天ぷらカーっていうんですけど、合法的にオーケーなやつなので、どうやったらできるかなっていうのをやったりしてます。自分たちでガソリンや石油は作れないので、その代わりをどうしようかなと考えてて。」
ずっとイベントも主催されていましたが、今年はどうでしょうか?
諒「子どもが生まれたので、もともと今年は自ら企画するイベントは予定していませんでした。
イベントも、もうなかなかできなくなるじゃないですか。この敷地内で開催するのもいいのかなと思っています。
大きなイベントももちろんイイんですけど、もうちょっと日常の生活に寄り添うスタイルのイベントがいいのかなと思っています。なので、今、庭を一生懸命に手入れしていますね。この冬に、敷地内に使えるものが結構あるなということに気がついて、小屋も掃除したりしていて、この小屋でもなんかできそうだなと思っています。ライブとかね。
今までのイベントのやり方って、どうやったってできないじゃないですか。でも、自分たちの土地で、自分たちでできる範囲で、人のつながりだけでできることを準備しようかなと思います。ここの敷地だったら、月1回くらいでも椅子を並べてしゃべるだけの空間を作るのもありかなと思ってます。商売っていうよりも、普段会えない人に会える空間ですかね。息抜きというか。そういうことができればなと思ってます。
その延長で、畑をやってみたいけど、土地を借りてまではやれないって方に使ってもらうような「畑活(はたかつ)」も考えていますね。
あと、親戚で山を持っている人がいるんですけど、今年は森に行こうかなと思ってます。こっちは「森活(もりかつ)」ですね(笑)うちは薪をたくさん使うんです。今までは買ったり、もらったりしてたんですけど、使う薪も含めて、何人かで森に行って楽しむイベントとか。
震災の時からガラッと考え方を変えて生きてきたので、そのアップデート版ですかね。ボジティブに考えていますよ。」
これからの収入のことについて聞いてみたいんですが?
諒「今回、新型コロナウイルスのことをいろいろ調べたりして、結局誰が言っていることが正しいのかって、もはや分からなくて、偉い先生がいろいろ説明してても、それへの反論もあって、一体どっちなのよって、情報を仕入れるのをやめてしまったんですよね。」
Tomi 「自粛になる前も休業してたので、じゃ、一体どうやって稼ごうかと考えて、お店をやったとしてもお客さんが来ないんじゃないかとか、テイクアウトだと包装の資材とかにお金がかかっちゃうから利益が減るんじゃないかとか、じゃ、オンラインショップを充実させようかとか、いろいろと考えてたんだけど、実際ね、春になったら、外の作業が楽しくなっちゃって、売り上げよりも自分で野菜を育てて食べよう!とか、ないものは作ろう!とか、なんかそういう感じになって、今、あんまりお店の活動は置いてある感じ(笑)」
諒「今までは外に出かけて、それを収入にしてたっていうのはあるんですけど、もはや世界の経済活動自体が大きな影響を受けていて、その中で、うちがどうやり繰りしたって、天才じゃない限りは伸びるわけがないんですよ。
例えば何か策を立てたとしても、みんな外に出たがらないってことは、そもそも売ることができない。オンラインショップって言ったって、コーヒー屋さんはどこもやってるじゃないですか。そこで差別化も難しいです。」
Tomi 「弱いよね、そこは。めちゃくちゃ売れる商品とかあるわけじゃないし(笑)」
諒「そもそも現時点で、経済のことを考えようって言っても、1個人で打開できる問題じゃないと思う。今は、お店っていうよりも、どう生きるかってことを考える時間が多くなってて、それは自分にはイイことだと感じています。
労働と仕事って違いますよね。誰かに言われてやるの労働で、主体的にやるのが仕事。その労働の部分が本当に必要かどうかって考えてみて、その労働の部分を自分に必要なものを生産する時間に充てていけば、その労働はいらなくなるわけじゃないですか。例えば食料を作れれば、生きてはいけるわけですよね。」
Tomi 「今まで冬の間を休みにしてたんだけど、冬って雪があるから外の活動があんまりできないんですよね。春から秋は、冬の分の蓄えを作るために一生懸命お店やったり、イベント出たりしてて。だから、今まであんまり外に出て作業することってできなかったら、今は思う存分できててストレスがないですよね(笑)」
諒「自分や家族のために時間を使えるって、一番幸せなんじゃないかと思いますね。」
Tomi 「もともと好きなことを仕事にしてはいるんだけど、今はそれさえもしなくていいっていう状態(笑)」
薪を準備するって、簡単にしようと思えば、灯油を買ってきてっていうことになるんですけど、なんで灯油を使わなきゃいけないのかな?って思った時に、結局、時間なんですよね。時間にお金を使っている感じ。
Tomi 「そうそう、時間をお金で買ってる。」
諒「例えば、時間で言うと、平日5日働いて、週末2日の時間を買っているわけじゃないですか。イオンに行ったり、ディズニーランドに行ったり、週末2日をどう過ごすかに充てるお金を、平日5日の労働で得てる感じがしますよね。でも、その5日を自由に使えるとしたら、何に使いますか?ってことだと思います。時間がかかることは楽しいです。」
Tomi 「でも、今、そういう流れってあるんじゃない?今、みんな家で料理をしたりしてるじゃないですか。普段やらないことをやり始めてますよね。それがキッチンだけじゃなくて、生活全体に関わっているんだって気が付いてくると思う。」
先日、浅虫のアプリコットさんにお邪魔しました。お店でテイクアウトに切り替えた時に、テイクアウト用の食器が手に入らなくなって、そんな時に自遊木民族珈琲さんがずっとされていたゴミを減らしていくという活動を紹介しつつ、なるべく食器を持ってきてくださいというお願いをしたら、みんなが協力してくれたっていう話をされていました。
諒「へー。すごい!今まで一生懸命やってきたけど、それが伝わりやすい状況になったんだろうね。
経済活動が停滞して、環境が良くなったいう話があるじゃないですか。ガンジス川が綺麗になったとか。でも、その反面、テイクアウトなどでプラスチックの消費量は増えているはずなんですよね。
うちは今お店をやってないから、マイカップを持ってきてっていうその流れは実感できないけどね。もしね、お店が再開されて、その流れが続いてくれたら嬉しいですよね。がんばってない時に成果が出るもんなんだなぁ(笑)」
Tomi 「アプリコットさんすごいですね。うちは前からマイカップ持ってきてくれたら50円引きとかやってて、イベントとかでもリユースカップを使ったりしてたんですけど、意外と浸透しなくて。難しいなとは思ってましたね。」
諒「この前、座礁しているクジラのニュースをみたんです。クジラの口を開けたら全部プラスチックだったっていうやつ。結局、僕らはそれを直接目にする機会がないだけで、たぶんそうとう量のプラスチックは流れてますよね。海はまだ汚いですよ。ゴミを増やさないようにしないと。
それは提供している店側の責任でもあるわけじゃないですか。結局、お店は資材代として料金を上乗せしていて、僕たちはそれを買ってるわけじゃないですか。そして、ゴミに出す時に市町村のゴミの処理代として、更にまたお金を払っているわけです。プラスチックを削減したら、商品も安く提供できるかもしれないし、市町村の税金も下がるかもしれない。みんなにとってメリットがあるんですけどね。
今までは、こうですって言われたことに対して、それをやりますって感じでしたけど、世の中が不安定な今、1人1人が自分の頭で考えなきゃやっていけない状況ですよね。どの情報を得て、それをどう処理して、じゃぁ僕はこうするって決めなきゃいけない。
それもプラスチックの話と一緒で、うちはこのプラスチックカップで出していますっていう店に対して、いやいや、自分はマイカップを持ってきてますのでって言える人が増えてくる感じはしますね。」
諒「コーヒーを豆で買って、家で飲むっていう人が増えてくれたら、プラスチックなんて要らないじゃないですか。家で、家族で楽しむ時間をみんなが持ってくれたら、変わってくると思うんですよね。
家で家族と一緒に過ごすために、どう生きるか?ってことを考えていけば、当然、そこに政治的な話だったり、環境の話だったりも出てくるし、そこからいろんな問題はクリアになっていく感じはしますね。」
そうですね、今回のことがあって、みんな家で過ごすことが多くなりました。
諒「いろんな人の気持ちを聞いてみたいですけどね。一生懸命仕事して、たまの休みに好きな飲食店に行って食事するのが楽しみな方が、今はそれができない。どんな気持ちでいるのかなぁとか。」
Tomi 「ステイホームになって、家にいるのが暇だ〜ってなんとなくネガティブな感じになるのは、楽しみにしてたことが外にあるからだと思うんですよね。でも、うちらは家の中、敷地内に楽しみがあるから、ステイホームってなったら喜んじゃう(笑)」
諒「三宅洋平さんじゃないけど、スローライフは暇じゃないっていうのありますね。何でも自分たちでやろうって思うと暇なんてないんですよね。そうなると、暇が生まれるってものすごい贅沢なんですよ。」
Tomi 「どうやったら暇になるんだろうっていつも思ってます。やることだらけで。ホント暇になりたい(笑)」
諒「だって地球は待ってくれないんですよ(笑)」
Tomi 「草は生えてくるし(笑)」
諒「という生き方していると、ニュースとかで流れてくる情報が、気持ちが分からない、理解できないってことが多いんですよね(笑)」
Tomi 「たぶん、都会と田舎、感染の中心地か否かとか、家族構成とか、仕事の状況とかそれぞれあるけど、割とうちは当てはまらないことが多い(笑)」
新型コロナウイルスに関して、収束するって考える人と、一緒に生きていくと考える人がいて、それによって今の行動が変わってくると思うんですが、どう考えていますか?
「もはやそういうことを考えること自体が面倒臭いなって感じになってきてしまって(笑)コロナのことは心配しなきゃいけないけど、それに振り回されないような心の持ち方を目指したいです。昔のスタイルにこだわればこだわるほど、考えなければいけないじゃないですか。それがストレスになっていく。だったら店をやめてもいいんじゃないとか、完全に自給自足に移行しようかなぁとか、世の中が常に変化してるって思えば、それに合わせていくだけだから、特にストレスはないですよね。」
「元に戻りたいと思う人は、収束したらアレやりたい、コレやりたいとか言って、結局何も変わらないじゃないですか。私たちは元に戻らないと思ってるから、今、こんな感じで過ごしてるんじゃないかな。」
「田舎の暮らしが最適だと思う。お金じゃないところに重きをおけば、3密を避けれるし、身体も動かすし、暇じゃなくなるし(笑)頑張って作物がいっぱいできたらお金に替えて。密集しない生き方がいいかなと思います。
人に頼りすぎない。自分でやれることはやって、やれないことは助けてもらって、というのはお店の活動や今までのイベントのテーマでもあるし、そこはブレてないと思います。」
(終)