【連載記事】3.11を覚えておく雑記帳。⑤
仙台駅前で同僚と別れ、私はとりあえず夫を迎えに行くことにした。電話はもちろん繋がらないけれども、なんとか安否を確認して合流したかったのだ。
夫の勤務先のビルに到着したはいいものの、エレベーターが使用不能になっていて、階段で行かなくてはならなかった。
普段から運動不足の人間が、1階から9階まで登るのは予想以上にきつかった。ところどころヒビ割れていたり、欠けていたりするビルの壁に怯えつつ、息を切らして9階までの階段を登りきった。オフィスの入り口で様子を伺っていたら、職員の方に「誰かお探しですか?」と声を掛けられたので夫の名前を伝えた。
夫は「あ、わざわざ来たの〜?」と言って、緊急時にも関わらずいつものようにのんびりとしていて腹が立ったが、今でもあの時を思い出すと涙ぐんでしまう。怪我もなく無事だったということに、ただただ感謝している。
その後、夫の同僚の方々と帰宅することになった。地下鉄は止まっていたので、徒歩である。約3キロを歩く間、日常を失った仙台市内の様子を見た。棚がからっぽになったコンビニ。大きく地割れしている道路。なんとなくガス臭い空気。これからどうなるのか、全く予測がつかなかった。